●行く川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず。夕の状況が朝にどうなっているかは誰にも確言できないのである。万物は流転すると説いたヘラクレイトスのように、これは別に東洋独自の思想ってワケじゃない。世の中全て、そういうことになっているのである。
「色即是空」と言う。形あるものは形無きに等しいと言うことだが、しかし世はただ虚しいだけだという意味ではない。このあとすかさず「空即是色」と続けるところに本質がある。ベクトルは一方向ではないのだ。
だから、人よ、明けない夜を嘆き給うな。終わらぬ嵐に挫け給うな。闇の中にこそ光はあるのだから。変化すること、移ろいゆくことこそこの世の本質なのだから。