メガロボクス/ゴジラS.P

メガロボクス2・4話。チーフのエピソード、一旦終了。彼の最後の生命を全部使って、仲間とのエピローグにまで気を使って、一人で去る。…冒頭から本当に丁寧に、フラグ…っつーと俗に過ぎるな。ある運命の予兆を物語は指し示し、そして開示する。ミオの言葉にサチオを思い出すジョーの表情は見せるのにチーフの顔はうまいことフレーム外にするとか、そういう演出で手を抜かないところがやはり好ましい。多分、この後もチーフは出てくるのだろう。その為のハチドリの話であり、それはジョーの支えの一つとなるはずだ。いやあ、いろいろと参る話ではありますよなあ。

ゴジラS.P・5話。山中に出現した怪獣に対して「地方自治体と猟友会による山狩り」ってのがすんげえご当地感で素晴らしい。…あんましゴジラに詳しくないので(先週からのアンギラスは判ったけど)出てくる怪獣の元ネタをよく知らないのだが、何となくオールスターのような祝祭っぽさは判ります。衒学的でカッコつけな科学者のおっさんが閉じ込められかけたシーンのはガバラというらしい。…知らんかったなあ。アンギラスも未来予知とかそういう元ネタあんのかなと思ったけど、どうも脳が分散してすばしっこいというのはあるそうな。へー。

一方の海外学者パート、その「未来予知」がアーキタイプと関わってくるという流れ。光子が時間軸方向に動いて反粒子対消滅するっての、ファインマンダイアグラムでのやり方みたいな感じ。時間越えてのアレコレで情報が保存されないことが最重要というのがすっと出てくるのがいいアニメだなあ。先行波とかEPRパラドクスとか、SFてんこ盛り感でよろしい。

ユンさんはあんなナリして結構無茶する人ですな。手負いのアンギラス見つけてフツーに「おお…」ってな感じで近寄ってくの、知的好奇心が大概過ぎる。あと冒頭のしっぽシーンはシンゴジラかなあ。そういや葦原なる謎の人物、シンゴジに於ける岡本喜八なんだろうね。だから何となく庵野っぽいんだろかしら。

 

夜は短し歩けよ乙女・続き

夜は短し歩けよ乙女。どうもかなり今の私に引っ掛かったようで何度か見てしまった。何らかの逃避とかそういうことかもしれないが、深く追求しない。とまれ、ばらばらと雑感を残す。あと絵描いたんでこっちにも置く。

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●原作では春夏秋冬各季節の話を、映画ではムリクリ一晩にまとめたらしい。四畳半のようにワンクールの尺でも見てみたかった、あまりにも駆け足であった各要素をじっくり堪能してみたかったってのはそう思う。ただこうしてコンパクトにまとまった美点もあって、ムリクリの統合によってかなり素っ頓狂になっちゃったお話のテイスト、これ自体が「一夜の狂乱」としての非現実的な楽しさに繋がってる。不思議な夜に出現したかりそめの異世界っぽさというかね。また周到に仕込まれた伏線やディテイルを再見によって拾いやすいってのもある。四畳半もそういう緻密な構成の作品だけど、あれもっかい総ざらえで見るってのはなかなかのリソースを要求してくるもんね。これはこれでアリ、とまあそんな感想。

●考えてみれば四季それぞれ、主題としてはみんな快楽的な設定なんだよな。ぐだぐだと続き道中で変人や知人に行き当たるはしご酒、水底を泳ぐような古書の集積をめぐる道程、カオティック極まりないパワーと色彩の学園祭、嵐の中で風邪ひいて自室に引きこもる非日常。全部、割とハレンチに近いほどに快楽的・享楽的なシチュだ。満漢全席っすね。

●この京都では風邪ひいたら物理的に風が吹く。風邪だけじゃなくて孤独を「拗らせ」ても吹くらしい。物語の要所で出てくる竜巻、これって李白さんが折に触れて孤独感を爆発させて発生させてた、でいいのかな。…黒髪の乙女が李白に「あなたは孤独ではなく、あなたの行動が結局みなと繋がっている」と言うときのイメージシーンで、竜巻がリンゴ園のリンゴを吹き上げてった絵が入るしね。このリンゴ群がパンツ総番長とダルマ姫のキッカケを作り、そして風邪ひいた実行委員長のとこにあった「竜巻に負けるな!」のリンゴはここのリンゴ園のものってことか。この辺は何度目か見返したときに気付いた。まだいろいろネタあんだろな。

●ちょっと前に英語吹き替え版も出ている(GKIDSの配信・そのトレイラー: https://youtu.be/NDs1W25kVso)。樋口師匠がものすごいイケボ。あと知ってる範囲内だと先輩のケレン・ゴフはどっちかっつーとゴツ目の敵キャラっぽいイメージだったけど、それがあの先輩というキャラをやらかすのが面白い。あとパンツ総番長のパトリック・セイズはすんげえハマってる感じ。キルラキルの蟇郡やこのすばのデュラハンのおっさんとか、こっちもゴツ目のキャラが多いのでよく合うんだろう。てことはロバートの秋山は稲田徹とか安元洋貴とか、そういうジャンルに当たるんかしらん。まあ判らんでもないけど。

 
 

メガロボクス/ゴジラS.P/ダイナゼノン/バック・アロウ

メガロボクス2・3話。チーフのトレーナーとして歩みだすジョーは、しかし当然ながらこれまでの代価を払わねばならない。クスリの離脱症状と共に現れる南部のおっちゃんの言葉は、自分自身が作り出した呪である。…攻撃的な自罰性であるその呪に対し、排除でも無視でもなく「もう一度俺と戦ってくれ」という…そうだねえ。これも自身の影との融合、ってなモチーフではありましょうかなあ。でもこっからは更に上部レイヤ、移民であるチーフたちが切り抜けるべき苦難に対してはキッツイことの連続だろうなあ。地回りのヤクザ相手に、正々堂々はちょっとナイーヴ過ぎたってことやろねえ。なんとかいい着地点でもあればいいけども…どうだろうなあ。

ゴジラS.P・4話。割と本格的にいろんなキャラが登場してくるのだが、独立自衛ジャーナリストに巨大組織の科学者に実行部隊のヘッドにそれに上から噛んでる政治家に、とどいつもこいつも癖が強そうでいいねえ。

んでアーキタイプなる超自然的物質について、光を閉じ込め外部からのエネルギーなしで増幅するというレーザ永久機関みたいなの、という無茶苦茶な代物だが、エネルギー保存則についてまず初手で釘をさすのがSF作家の脚本として信頼度が高い。でもまあこの情報だけなら(トリックがないとして)、分子構造などに高いエネルギーが内包されてると考えてもいいよな、とは思います。空間だけじゃなく時間方向へも屈折するってのはとてもいいネタなのでオッケーですけども。なんかチオチモリンみたいだな。

あとアーキタイプという名前そのものねえ。メイさんとユンさんの会話で「謎の答えはもとからそこにある」ってのを合わせると…なんかすげえ根源的な方向にまでネタが行きそうな気がする。怖い怖い。

●SSSS.DYNAZENON・4話。今んとこ怪獣襲来の危機と各個人の事情がほぼ並列して描かれている。もとより「作られた世界」的なネタの作品だし、その辺がそこそこシームレスに繋がっていくだろうことは予測は付くんだけどね。今回は怪獣という存在について、それは人が望んだ一面なのではないかという話もちょろっとあり、そしてちせさんにもある程度の役割ができたけど…でもなんか不穏なんだよなあこの子の立ち位置。つーか、背後にあるだろう重さに比してみんなかなりユルい感じなのが割といい。敵味方の関係とか、会話のバシッと決まらない感じとかね。風邪引いて決め台詞ごとにゲホゲホ言ってるヨモギさんが象徴的。あとどうでもいいけどヨモギさんちの体温計、俺んちのと同じだ…。あれ結っっ構古いぞ。

●バック・アロウ・16話。あっちう間に2か月も経っちゃうのが展開の早い本作ならではである。フィーネ姫様が独立国家エッジャ村の顧問になり、リンガリンドの平和を目指すがルドルフさんはそう思わないんである。レッカを焚きつけるに小物ぶりも美しいテイさんと、新たな陸上戦艦を使ってかき回しにかかる。彼に神託を授けてる上位存在は何なんでしょうね…今回登場の「怪しい」を絵に描いて額にはめたみたいなフードの人がその手のものかしら。あとグランエッジャの国王になったアタリーさん、なんでちち見せ服なのか。それがあの世界での高貴な人のイメージなのか。いいことですが。

 

夜は短し歩けよ乙女

●録画してあった「夜は短し歩けよ乙女」をやっと見る。他者に対して無私の幸せを無慈悲に撒き散らす完全で完璧でおまけにうわばみな黒髪の乙女が、一つ「風邪」をひいて人としての不完全性を手に入れて人たる存在の先輩の許に降りる話。…まあその、劇中にて何もないすっとこどっこいの象徴として描かれる「先輩」が実際のところ、能力と好機の双方において真っ当な星の下に居たからこそですよってのは、四畳半神話大系と同じくしてのことではあるんですけどね。そんなお二人さんの…、俺的にはともかく世間的には凡百の一である関係性を京都(≒世界)の危機として描く。セカイ系的な内向韜晦と真逆なフルスイングが気持ちいいことではある。心の奥底にこびり付いたある本への偏執が一つの軸になる辺りがあざとくて憎たらしい。俺にとっては佐藤さとるの「誰も知らない小さな国」だが、誰しもそういうのはあんだろなあ。

とかそういう、自分の心の柔こいところの話もいいけども、やっぱハヌキさんと樋口師匠の関係性があまりにもかっこよすぎてたまらんなあ。このあとフツーにくっついてもあれこれあって別れても、下手したらずうっとこのまんまでもあざとかっこいい。二人のかっこよさのベクトルがなんかちょっと違うあたりもかっこいい。俺のような人間には到底とどかない、でもこういう人居るなあ…って感じのかっこよさ。

キャスト、星野源の先輩は全く問題なし、キャライメージそのまんま。樋口さん、藤原啓治から引き継いでの中井和哉は本当にテメエを見せたと思いました。あとパンツ総番長の秋山竜次はすごかったです。とまあ野郎連中もいいんだけど、やっぱ乙女の花澤香菜が抜群にいい。あっけらかんとして常に前へ進む、おともだちパンチの権化みたいなキャラにベストマッチでしたよ。んで作画的には何一つ文句がない。圧倒されっぱなしで胸焼けしました。後半の大スペクタクルもいいけど、前半の乙女の酒飲みシーンとかがなんかすげえ響いた。全体的に、とてもたまんないアニメでした。よろしい。

 

ゴジラS.P/ダイナゼノン/バック・アロウ

ゴジラS.P・3話。赤い霧とともに現れるラドンの群れ。電波によって引き寄せられ暴れ回るも短い命として次々と死んでゆく。割とリアルなデカさの猛獣の群れに襲われて知恵と技量と運で打破するという、なかなか模範的なモンスターパニック映画のフォーマットでんな。現実よりちょい未来のテクノロジーとそれを使いこなすお人というセッティングで、今この視聴環境下での現実的なSFとして結構なレベルの話運びだと思うん。…ワンダバコーラスまで使うってのが特撮集大成っぽくていい…っつーか町工場メンツは明らかに円谷テイスツではあるなあ。その上でラストはゴジラメインテーマで引き、というあざとさがよろしい。うーん、今んとこすげえ面白い。

●SSSS.DYNAZENON・3話。ガウマさんの目的が明らかになる話。探し人が居るってことで「男の人ですか」「女だ」「あー…」ってのがすげえ生っぽくていい。隠してた理由が女性探しで恥ずかしいからとか、それ謝るのに90度で頭下げるとか、交通誘導バイトしつつサワガニ喰ってるとか、今回もガウマさんのエエ人ぶりがよく目立つことです。んで敵側の人たちも超越的存在というよりは割とアレな…まあその、人間臭いとこがもろもろあったりして、そういうとこがいいフックになっている。あとトリガーっちゃァ宇宙バトルだけど、3話でもう宇宙来ちゃったのは最速かしら? それとあと、授業の度にパラドックスのネタやってんのはゼノン繋がり?

●バック・アロウ・15話。戦争は終わったが、その帰結すら選帝卿ルドルフの掌上にある…ってなワケで時代(と気まぐれ)で磨りつぶされようとしているフィーネ姫が「独立国」グランエッジャに亡命するまで。なんかフツーのアニメなら2話か3話でやるところを一気に駆け上ったな、って感じでんな。デカい船が主人公たちの文字通りの拠り所になり、なんか一時期の富野アニメみたいになってきた。あるいは沈黙の艦隊といいますか。あと千葉繁が割とひねりもなくモブ民衆(の象徴ではあるが)だったのと、関先生に全くウラが無くてエエ話として死んだこと。いずれも偏見の目で見ててすみませんでした。ハイ。

 

メガロボクス

メガロボクス2・2話。相変わらず陰鬱で沈んだ雰囲気作りがまあ、うまいことうまいこと。人が死ぬだの叫ぶだのとかナシで、ただ苦くて重い状況があるというその世界の語り方。その中にあって両の足でちゃんと立つ、チーフやマーラのような真っ当なキャラ。しかし、そんなヤツも多分、現実の前には錆びてゆくのだろう…と思わせてくれる、そういう空気。…ジョーは多分チーフのコーチとしての役割を持つんだろうが、さてねえ。最終的に彼自身がリングに上るんだろうが、そうなると…チーフの物語上の役目は多分…ねえ。あとOPがすげえ良かった。渋いよねえ。